この曲をプロデュースした超大物アレンジャー、かつての「音の壁」考案者=フィル・スペクター。彼が1961年に世に出したパリス・シスターズのヒット曲<I Love How You Love Me>(この曲はのちに日本のピンク・レディがカヴァーしてもいる) の残像を瞬間瞬間に感じさせながら、そこに実に18世紀からの母国イギリスの伝承フォークソング<Stewball Was a Race Horse>の流れをいかにも天才的に組み込んだ。ジョンは幼少期にこの古い歌のドーナツ盤をミミおばさんの家で何度も聴いて育っていたのだ。
この曲の聖歌隊を務めた実際のハーレムの子供達(ハーレム・コミュニティ・クワイア) が、曲の間ずっと2人と一緒に口ずさむ『WAR IS OVER / IF YOU WANT IT / NOW』(『争い(=困難)は終わる / もしも本当に望むのなら / 今すぐにでも』)。その「WAR」は、僕らの日々から遠く離れた実際には自分に関係のないどこかの戦場や惨場の、痛みや実感のない彼方の出来事を単純に指してはいなかったし、その「NOW」は、未来を夢見た無邪気な子供達の歌うパートを増やすために、ついでに付け足された一語というわけでもなかった。50年前に後にした遠いあの時も、半世紀後の今、さしたる疑問なく当たり前に手にしている近くの今夜、この時もである。