2. JOHN LEGEND & THE ROOTS『WAKE UP !』
(SONY)。
もうひとつ、何かが足りない感がずっとあったジョン・レジェンドだが、このROOTSとのカヴァー物コラボ作で、ようやく本領を発揮した。ここ数年で最高のソウルの宝石。それとともに、カーク・ダグラスのギターの音は聴く者のソウルを、ピンではなくピックで釘づけにする。
3. BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND『NO PRIVATE PARTY - ROXY 1978』(ブートレッグCD、EV2)。
彼の生涯最高のライヴのひとつが、過去最高の音質で再発売された。1978年7月7日、ロサンゼルスのROXY。スタジオ版を無用にする2曲 ――<PROVE IT ALL NIGHT>の長いイントロの迷宮、続く<RACING IN THE STREET>エンディングの、物事がすべて一斉に遠く消え去っていく描写、儚き事象としての「終わり」という美と苦さを忘れはしない。
4.『MARNIE STERN』(Kill Rock Stars)。
自主規制と自己検閲。それはあらゆる可能性の扉をみずから閉じてしまう甘い罠である。そこからの解放を実践しようとする(ポスト・)ポストロック。
8. 映画『KNIGHT & DAY』(『ナイト・アンド・デイ』、トム・クルーズ、キャメロン・ディアズ主演、ジェームズ・マンゴールド監督、20世紀FOX)。
大した映画ではないものの、10年前の『VANILLA SKY』同様、このペアは相性がいい。そしてこの映画は、大英帝国007=ジェームズ・ボンドに対する合衆国的回答として観ることができる。エンディング近く、メキシコに行こうというくだりで、キャメロンがトムにクリストファー・クロス(CHRISTOPHER CROSS)の<RIDE LIKE THE WIND>( 『風立ちぬ』「and I got such a long way to go / to make it to the border of Mexico...」=「目指すメキシコ国境までは / まだまだ長い旅さ」) をかける場面がいい。
10. BLACK KEYS『BROTHERS』(Nonsuch) & "MORNING BECOMES
ECLECTIC" (スタジオ・ライヴ、KCRW-FM) 。
失敗作のないオハイオのデュオの、ブルーズのような、サイケのような、ソウルのような、ロックのような濃密なタイムトリップ。タイムスリップではない。スタジオ版そのままの、ライヴでの極上の演奏力にも悶絶。アナログよ永遠なれ。
plus one: 11. DAVID LYNCH <GOOD DAY TODAY / I KNOW> (Nonsuch)。
リンチの歌手デビュー。<GOOD DAY TODAY>はローリー・アンダーソンの<O SUPERMAN>を、<I KNOW>は自身の映画『TWIN PEAKS: FIRE WALK WITH ME』(『ツイン・ピークス: ローラ・パーマー最期の7日間』、1992年) または『MULHOLLAND DRIVE』(『マルホランド・ドライブ』、2001年) 中のシークエンスを思わせる出来栄え。