彼女のお気に入りの洋楽カヴァー作を聴くと、その歌唱から類型的な懐メロ感覚や、通りいっぺんの懐古的なものが、きれいに消えているのが聴こえる。ジャニス・ジョプリンの<Piece of My Heart>もジム・クロウチの<Bad, Bad Leroy Brown>も、2010年のポップ、あるいは2020年の音楽なのだ。Superflyが規定するその時代では、古いとか新しい、ウケるウケないといった概念は些細な、二次的なものに過ぎない。主眼ではないのだ。それは芸能と違い、多言語な、多様な時間を許容する。物事を渇望し、その渇望を自らすすんで信頼、追求することによって、その経験を許容から没頭に、没頭から実現可能な現実に変える。