追悼アレサ・フランクリン:
”ソウルの女王” と<悲しい酒>と<喝采>と
【この批評は雑誌 『レコード・コレクターズ』 2018年11月号掲載原稿に加筆した増補版です】
8月16日の深夜11時。アレサ・フランクリンが亡くなったという世界的なニュースを知って、頭の中で複数の曲がかかり始めた。最初はスティーリー・ダンが1980年に出した全米トップ10シングル<Hey Nineteen>の忘れ難い一節だ。
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本当の言葉は遅れてやって来る:
佐野元春『Maniju』
【この批評は佐野さんの公式サイトMWS (Moto's Web Server) 内『特集 Maniju評論』との同時掲載です】
言葉は、最初に発された随分あとになってから、その人に届くことがある。佐野元春の2017年7月の新作『Maniju』は、その「言葉の遅延」についての楽しく、示唆に富み、勇気づけられる希少な音楽だ。
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紫のソリテアー:
プリンス追悼『井戸の鳩が鳴くとき』
【この批評は雑誌『現代思想』2016年プリンス特集増刊号掲載原稿に加筆した改訂版です】
1980年に刊行された村上春樹の第二作小説『1973年のピンボール』の中に、さりげなくも心を揺さぶる、素晴らしい一節がある ――
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当たり前を超えてゆけ:
星野源<恋>とドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』
星野源の<恋>を聴いていると、まるで「ちゃんと聴かないで」と言われているんじゃないかと思ってしまう。言葉はメロディーに乗ったと思った途端に予想外の速さで通り過ぎていき、一瞬CDの回転数が違うのかなという錯覚に襲われる。それでもやっぱり、その声とサウンドは「ついてこなくてもいいから」と言っている。その<恋>という忙しない音楽が、じわじわと響いてくるのはなぜだろうか。
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セピアとソケット:
ミスチル<Tomorrow Never Knows>
マイラバ<Hello Again -昔からある場所->
Mr.Childrenのキャリア最大のヒット・シングル<Tomorrow Never Knows>は1994年の秋深まる11月に発売された。現在までの売上総数は約280万枚。My Little Loverのキャリア最大のヒット・シングル<Hello Again -昔からある場所->は翌年1995年の8月晩夏に発売された。現在までの売上総数は約180万枚。この2つの曲が当時語っていた事、現在も語っている事は現代日本の芸能音楽の歴史上ずっと特異なままだ。
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2000トンの晴れ:
クリスマスと神保町と山下達郎<2000トンの雨>
主人公の心象をエレガントに引きずる鮮やかなシンコペイションのドラムス、その心象と心音をバックアップする小節末尾のパーカッション、音の壁=フィル・スペクターゆずりの分厚く暖かいウォール・オヴ・サウンドの音場設定、四方に八方に心の手を伸ばし発泡のように拡がり続けるコーラス、作者兼アレンジャー兼ヴォーカルの山下達郎の、25歳の新鮮でナチュラルで、傷でいっぱいで、友達のようで自分のようで、深遠でもある声。
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アンティークと鉄琴とハープ:
サザン・オールスターズ<真夏の果実>
始まって20秒以内に涙腺に異常が発生するヒット曲、それを20秒以内で思いつくだろうか。例えばそれは、サザン・オールスターズ<真夏の果実>のイントロである。加勢大周主演の1990年桑田佳祐監督映画『稲村ジェーン』の主題歌として大ヒットしたその曲は、日本のヒットポップ史における、時々の、大小の一喜一憂を超え、サザンの長いキャリアでも屈指の名曲として、今も日本に生きる人々の心の中にある。
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