REVIEWS
アニメ『ハンター×ハンター』(製作 フジテレビ+日本アニメーション、音楽 佐橋俊彦、監督 古橋一浩、1999年10月-2001年3月放送)
が運んでくる物語は、何よりもまず調和についての物語である。木々との調和、風との調和、他者との調和、自己との調和、それに世界との調和 ――
。ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ、ヒソカたち登場人物それぞれの背景と出自を通して、それらの調和が生まれ、見つかり、近づき、育ち、拒まれ、疑われ、崩れ、見失われ、取り戻される。あるいは戦われる、諦められる。けれどもその調和は、あらかじめ予定されたものでもなければ、僕らが今までどこかで見かけた覚えのあるどんな調和とも違ったものだ。
『ハンター×ハンター』が物語られる世界では、あらゆる物事は語られるたびに「はじまり」に、真っ白のキャンバスに、何もない地平の上にリセットされる。このアニメには数え切れないほど多数の劇的な瞬間、たくさんのいい場面、いい絵があるのだが、しかしその絵自体に重苦しい圧力とか感情のもたれ
(もつれ、ではない)
といったものがないのはそのためだ。僕らはこのアニメを何度も繰り返して見ながらも、実は何度も初めてそれを見るのであり、見ている間にゴンとキルアの関係やヒソカの表情に潜む謎を、他の何かと比べたりはしない。リピートを無関係なものにしてしまう構造、それが『ハンター×ハンター』の構造であり、その中で起こる出来事はすべてが「今はじめて起きている」出来事なのだ。ゆえにそこで生まれる調和、死んでいく調和は、いずれも確たる保証を持たない不確かなものである。けれども、その不確かさがこんなに心地よいというアニメは、これまでなかった。
【WEB掲載契約の規定により、本評の日本語版掲載はここまで】
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