このアルバムが911のリアリティーをいまだに強く掻き立てるとすれば、その問いは、作品全体を彩っている濃淡様々な「警句的色合い」へと聴く者を向かわせる。『Get Ready』のサウンドは常に1つの塊として押し寄せる。細部のくっきりとした、隅々まで見通せる塊。人々に新しい聴き方を差し出す塊。これまでのエレクトリック・ダンス・ポップ・グループでなく、結成20年目に新しいロック・バンドとしての歩みを刻んだ "NEW ニュー・オーダー" がその塊をポップのクリスタルに変えるその一瞬に、諸々の警句は生まれる。
そしてその水晶は、自宅の部屋のガラス・ケースにずっと飾っていてもしょうがない。それは自分の重荷、世界の残骸と取替えるためのツールである。本当にGET READYするためには、人はまたもう1度『Get Ready』へと戻らなければならないのだろう。<Run Wild>の終わりにサムナーが最大限の心を込めて、同時に最大限にさり気なく歌う。「いい時代は / 本当はすぐそこまで来ている」―― GOOD TIMES ARE AROUND THE CORNER ―― その水晶は人々が「時代と惨事、その日の気分」に関係なく探し続け、求め続けてこそ、持てる真の輝きをさらに深く残し続けるのに違いない。その輝きを単に認めるだけでなく、輝きの放つ新しい虹彩へと、耳のまなざしをすすんで投じようともする人々と共に。