Kool & the Gangの<Misled><Too Hot>、Yesの<Roundabout>、Gary Wrightの<Dream Weaver>、Bugglesの<Video Killed a Radio Star>、Climax Blues Bandの<Couldn't Get It Right>、Cameoの<Word Up>、Bobby Bloomの<Montego Bay>、10ccの<I'm Not in Love>、Donna Summerの<Bad Girl>、Bobby Caldwellの<What You Won't Do for Love>、New Orderの<Blue Monday>、C.W. McCallの<Convoy>...。
ヨーロッパを席捲した第1弾シングル<One More Time>では、冒頭のエコーするファンファーレがフォー・シーズンズ(Four Seasons) の<Can't Take My Eyes off You>(『君の瞳に恋してる』) の一節を意識下でなぞり、そのエコーがクール・アンド・ザ・ギャングの<Celebration>を誘い込む。
1分40秒のインストゥルメンタル<Nightvision>が呼び起こす幻想的ムードは、10ccの<I'm Not in Love>の有名な波打つシンセ・サウンドを思わせるが、ムードの性質は異なる。<I'm Not in Love>がそのまま成長して大人になった感じなのだ。ということは<I'm Not in Love>は未成年なのであり、実際この曲には10代特有の一定の感傷作用とロマンティシズムとがあった。
ティーンエイジの甘美な愛と死 ―― その主題に完璧に沿った映画のサントラ盤の真ん中に<I'm Not in Love>がある。<Nightvision>は演奏時間が短く、その記憶はすべてを語っているとは言えないが、しかし、10ccのロマンティックな甘い記憶と同一ではない。それはかつての自分の記憶が甘いものだったことを打ち明ける記憶、大人になった今、かつてそうだったのだと認める記憶である。依然としてその記憶は甘くはあるが、もはや遠くはない。死は甘いけれども愛はそうではないのだ。それがこの曲のスパイスである。
バグルズの<Video Killed a Radio Star>が心地よく導く<Digital Love>の終盤で響き渡るクラヴィネット・ソロがもたらすまばゆい邂逅、<Always on My Mind>以降のペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys) 風な<Superheroes>の加速度的スリル、クライマックス・ブルーズ・バンドの<Couldn't Get It Right>で始まりキャメオの<Word Up>で終わる<Harder, Better, Faster, Stronger>のリズミックな迷路、ボビー・コールドウェルの<What You Won't Do for Love>から不必要な気取りだけを取り去った<Something about Us>が醸し出す、静まり返った絶対的午前3時 (真昼に聴いても時刻はそこを指している)
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