<Belle>は "大文字の彼=HE=GOD" に出遭った喜びと、その彼を慕い信じることがもたらす心の平静と安らぎについて、人生のパートナーであるベルという女性にグリーンが語りかける歌である。それは宗教上の勧誘とか説得とかでは全くなく、彼は心の底から真摯に誠実に話をしているだけであり、そうすることが出来ることを自然体で喜んでもいる。「僕は / 遠くに行くわけじゃ / ないんだよ」とグリーンは歌った。「遠くに行くこと」= Go Far は宗教用語上では「転向」を意味する。信仰を変えること、新たに持つことがその人間の「生来の信条」を変えることをも要求するという考えである。
転向を宣言することは、自分の信仰の対象である新しい神に対して忠実と従順を誓うリトマス紙の役目を果たし、それゆえ伝統的キリスト教においては転向の宣言は、転向以前の自分の実人生の再検討と再構成をしばしば求める。過去の自己とのある種の訣別がその先にあるからだ。信教の自由と神の選択の自由との背後には、その転向のもたらす合理性と苦々しさとが顔を覗かせてもいるというわけだが、それが聖書の言う「代価を、代償を支払うこと」(=Pay the Price) と同義であるのかどうかはよく分からないし、知ろうともしないけれども、グリーンはよく知っていた。知っていながら彼は転向はせず、敢えて自らの意志で「自分のいま居る場所」に留まったのだった。